「南極って、普通の家族でも行けるのだろうか」
ブエノスアイレスを出発して南極半島まで往復する18日間の航海を経験した。
行ってよかった。人生で最も「遠い場所」に、確かに立った感覚がある。
その記録として。
旅の概要
- クルーズ船: サファイア・プリンセス(プリンセス・クルーズ)
- 旅程: 1/5出発・1/28帰国(総計24泊25日)/うちクルーズ18泊19日
- ルート概要: 日本 → フランクフルト経由 → ブエノスアイレス → ドレーク海峡 → 南極半島周遊 → ドレーク海峡 → ブエノスアイレス → 帰国
- 客室: バルコニーキャビン
- 乗船人数(船): 約2,600名
- クルーズ代 約14000ドル チップ、ドリパケWifiは別途
- 飛行機代 120万円ほど ルフトハンザ航空利用エコノミー
出発まで:ブエノスアイレスへ
我らのクルーズはアルゼンチンの首都ブエノスアイレスから出発する。
日本からの直行便はなく、必ず乗り継ぎが必要になる。
目指す空港はエセイサ国際空港である。
スリーレターコードはEZE
クルーズポートの近くにも空港(AEP)はあるが主に国内線らしい。ウシュアイア発の南極クルーズの場合はAEPからウシュアイアへのフライトとなる。
EZEからブエノスアイレスのクルーズターミナルまでは車で1時間強かかる。
前日のうちにブエノスアイレスまで移動しホテル泊、翌日クルーズターミナルへ向かうこととした。
日本からEZEへのフライトについて
検討の候補となったルートは4つ。
1北米経由
アメリカ各都市を経由するルート。乗り継ぎ便の選択肢は多い。フライト時間が最も短い。が非常に高価なのと冬場の天候不順による遅延リスクおよび乗り継ぎ時の入国審査の時間が読めないことから候補から外した。
日本からの航空券がとにかく高価(FSCエコで家族3人200万越え)であった。
日本ー北米と北米ーアルゼンチンを別切りで取ればもう少し抑えられたんではないかと思う。
2ドバイ経由
比較的安価で乗り継ぎはあるものの同一航空会社(エミレーツ航空)で最終目的地まで行けるのはメリットである。
しかし南米までとなるとフライト時間が長い。
さらにブラジルで一度着陸して再出発するケースがあり
アルゼンチン到着がかなり夜遅くなることも多い。
帰りのアルゼンチン発のフライトも夜遅くであるため実際に一度は予約したが
こうした条件が重なったため取りやめた。
旅行会社のパンフレットを見ると多くのプランがドバイ経由であることから中東情勢が安定していればバランスの取れた選択肢になる模様。
3ヨーロッパ経由(使用ルート)
乗り継ぎ時間を含めると北米経由より総時間はかかる。トータル概ね40時間ほど
候補はドイツ(フランクフルト)、オランダ(アムステルダム)
メリットは
北米経由と同じくブエノスアイレスに午前中に到着できる。
かつ料金が北米経由ほどではない(ルフトハンザ航空でエコ3人で120万ほど)
翌日が乗船日の場合、午前着なら市内観光を楽しむ余裕が生まれる。
基本的に前泊する想定ではあるが午前着であればもしも24時間遅延したとしても
乗船当日の午前に着くことになるので船に間に合う可能性が高い。多くは昼くらいから乗船が始まり夕方前に出港であるため。
HND-FRA-EZEのルートでルフトハンザで予約するとHND-FRA間がANA運行となり
日本人としては安心する。ANAのサイトから検索してもFRA経由はヒットしなかった。
ルフトハンザ航空のウェブサイトは非常に安定(韓国、中国系とくらべ)していた。変更や返金の手数料がかからないフレックス運賃とそれ以外の価格差がそれほどなく非常にメリットを感じた。
4アフリカ経由
エチオピア航空で向かうルート
日本からICN-ADD-GRU-EZEと経験値が上がりそうなルート
こちらも比較的安価であったが乗り継ぎの多さがネック
余談だが日本から韓国へ安価で行ける知る人ぞ知る航路らしい。
フランクフルト乗り継ぎ:ひとつの記憶
羽田発のANA運行便 B787
時間は長いもののエコでもそれなりに快適だし機内食美味しいし日本語環境だし気楽ではある。機内食の容器は紙で2023年のデルタ航空を思い出した。
フランクフルト空港での乗り継ぎ待ちの時間、ふらりと立ち寄ったお土産屋さんで、店員の方から突然日本語で「良い旅を」と声をかけられた。驚いて振り返ると、にこやかな笑顔。それだけのことなのに、なぜかじんと来た。南極まで向かう長い移動の途中で、見知らぬ人のその一言が、旅の記憶のひとつになった。
ブエノスアイレス着陸:拍手の機内、そして入国審査の洗礼
ルフトハンザ航空のB747
事前に座席指定をしていたタイミングでは多くの席が空いて
もしかしてけっこう快適なのかな?なんて思っていたが
いざ搭乗してみたら満席!荷物入れもぎゅうぎゅう
真後ろの方はなにやらFAさん話しピリつき気味。。
英語、スペイン語、ドイツ語環境。
機内食の容器はアルミ。
紙製だとそうでもないが、物凄い熱々で”熱いものは熱々で食べろ”と言われているようであり美味しくて思い出に残る機内食だった。
雪荒ぶドイツの航空会社ならではだろうか。
個人モニターでマップを見ながら先が長いなと嫌になりながら途切れ途切れの睡眠。南下して大西洋上に出た頃にはなんとかまとまって寝られたような気がする。
ブエノスアイレスへの着陸は、なかなかスリリングだった。最終アプローチで機体がかなり揺れ、接地の瞬間、機内のあちこちから自然と拍手が起きた。
初めて経験する身には少し驚きだったが、こういう一体感て良いなと感じた瞬間でもあった。
その安堵もつかの間、入国審査で早速洗礼を受けた。
担当のお姉さんが何か英語で聞いてくる。答える。通じない。また何か言われる。
わからない。お互いの会話がまったく噛み合わないうちに、イライラし始め、机をトントンと叩き出した。
焦った。
スマートフォンを取り出し、ホテルの予約画面と帰りのフライトの予約画面を無言で差し出した。担当者がさっと確認し、すんなり通過。言葉より画面、であった。
ネットの事前情報ではUberがあまり歓迎されていないような記事があったので
公式タクシーを使うか迷ったが
トリップドットコム経由で送迎サービスを申し込んでおいた。
ドライバーとメッセージアプリで連絡をとり
なんとか乗車。事前に言葉の壁がある旨を送ったら向こうも英語ができないから翻訳でやり取りしようとの返信が。英語できなきゃ外国人と仕事できないと凝り固まっていた自身の思考がほぐれた瞬間であった。
ブエノスアイレス:予想外の街
正直、南米の夏だから暑くて大変だろうと思っていた。ところが実際は違った。
日本の夏のほうがよっぽど暑く、過ごしにくい。
ブエノスアイレスはカラッとしていて、日陰に入るか風が吹くと涼しいくらいだ。
湿度の低さが全然違う。
ホテルを拠点に、街を歩き回った。
まず印象的だったのが、街中に点在する小さなキオスク(売店)だ。お菓子、飲み物、雑誌などを売る小さな店が、通りのあちこちにある。旅行者向けではなく、完全に地元の日常に溶け込んでいる。何気なく覗くだけで楽しかった。
スーパーにも何軒か入った。現地の食材や調味料、安価なお菓子を見て回るのは、その国の生活感を直接感じられる時間だ。
観光地よりも、こういう場所のほうが街の本音が見える気がして非常に面白い。
そしてエル・アテネオ(El Ateneo Grand Splendid)。かつての劇場を書店に改装したこの場所は、「世界で最も美しい書店」のひとつとして知られている。天井の装飾、バルコニーの本棚、舞台をカフェに転用した空間——言葉より、実際に立ってみることで伝わるものがある。本を買う予定がなくても、ここは訪れる価値がある。
街の人は全般的に親切で、言葉が通じなくても助けようとしてくれる雰囲気があった。「南米は治安が心配」というイメージを持って行ったが、少なくともこの街の日常の中では、安心して歩き回ることができた。妻も同じことを言っていた。「人が優しい」と。二人とも同じ印象を持ったというのは、街の空気として確かにそういうものがあるのだと思う。
翌朝ホテルの朝食ビュッフェでも、その空気を感じた。店員さんが穏やかで、静かなのだ。べらべらと話しかけてくることもない。それが非常に居心地よかった。
チェックアウト後Uberにて港へ。乗船編へつづく?






